最近政治資金収支報告書における個人献金のずさん記載が話題となっています。
当初は石破茂首相や閣僚たちの政治団体での問題が注目されていましたが、調査が進むにつれて県知事や野党党首の政治団体でも同様の問題が発覚しました。
個人献金者の住所欄に、その人物が代表を務める企業の所在地が記載されているケースが多数見つかり、実質的な企業献金ではないかとの疑問が持ち上がっています。
この記事では個人献金ずさん記載の発覚した県知事20人は誰なのかということについて
個人献金ずさん記載問題や企業献金の規制について詳しく解説しながらまとめてみましたのでご覧ください。
・個人献金ずさん記載が見つかった県知事20人
・政治献金をめぐる問題の全体像
・企業献金の規制と現状
・個人献金と企業献金の違い
個人献金ずさん記載の県知事20人は誰?
共同通信の独自調査によると、4月1日時点の都道府県知事のうち20人が代表を務める政治団体で、個人献金者の住所表記が実態と異なる例が計610件(総額3629万1千円分)発見されました。
これは2021年から2023年に受けた個人献金について、各団体の政治資金収支報告書を調査し、寄付者が代表や役員を務める企業・団体の所在地などが書かれているケースを集計したものです。
個人献金ずさん記載が多かった県知事20人について誰なのか調査してみましたが。
現在名前の出ている県知事については以下の通りとなります。
【埼玉・大野元裕知事】
317件(計458万円分)
【長崎・大石賢吾知事】
78件(計681万円分)
【長野の阿部守一知事】
43件(計84万円分)
寄付者の企業が県発注工事を落札したり、県と随意契約を結んだりしていた例も見つかっています。
企業・団体献金の受け皿となる政党支部を持たない知事が、後援会などを通じて事実上の企業献金と疑われかねない寄付を受けていた可能性があります。
この調査結果は国会議員の問題に続いて明らかになったもので、地方自治体の首長側への個人献金においてもずさんな処理が行われていたことを示しています。
では次に今回の問題の発覚のそもそものきっかけとなったここ最近相次いでいた個人献金ずさん記載の問題について紹介していきます。
相次ぐ個人献金のずさん記載問題について
個人献金のずさん記載問題は石破茂首相の政治団体から発覚し、その後さまざまな政治家の政治団体に広がっています。
まず石破茂首相が代表の自民党鳥取県第1選挙区支部(鳥取市)が2021年に受けた個人献金のうち14件計132万円分について
政治資金収支報告書の寄付者の住所欄にその人物が代表などを務める企業や団体の所在地を記載していたことが判明しました。
同様の記載は石破首相と閣僚の計14人の政治団体で発覚し、総数は370件計1472万2千円分に上っています。
政治資金に詳しい神戸学院大の上脇博之教授は「政治資金規正法の虚偽記入に当たる恐れがある。実質的な企業献金と疑われかねない」と指摘しています。
また、この問題について追及するべき立場にある野党側からもこの問題は発覚しております。
国民民主党の玉木雄一郎氏ら野党の代表や共同代表計6人の政治団体についても、2021~23年に受けた個人献金のうち289件総額2113万5千円分について同様の問題が見つかりました。
最多額は日本維新の会の前原誠司共同代表の1546万円分でした。

このように政府与党だけでなく野党側でもずさんな記載が発覚したことで、国民の政治不信に拍車がかかることが懸念されています。
企業献金は違法なの?
企業献金自体はすべてが違法というわけではありませんが、政治資金規正法によって厳しく規制されています。
【寄附の対象者による違法性】
・政治家個人への直接的な企業献金は禁止
・政治家の資金管理団体への企業献金は禁止
・政党・政党支部・政治資金団体以外への企業献金は違法
【企業の属性による違法性】
・国から補助金等を受けている会社による政治献金は禁止
・3事業年度以上にわたり継続欠損を生じている会社からの献金は禁止
・外国法人からの献金は禁止
(ただし、5年継続して上場している外資系日本法人は除く)
【寄附の量的制限による違法性】
・企業の資本金に応じた上限を超える献金は違法
資本金10億円未満:750万円まで
資本金50億円未満:1500万円まで
資本金100億円未満:3000万円まで
以降、段階的に上限額が上がり、最大1億円まで
【寄附の方法による違法性】
他人名義(トンネル献金)による政治献金は違法(3年以下の禁固または50万円以下の罰金)
政治資金収支報告書への虚偽記載は違法(5年以下の禁固または100万円以下の罰金)
【迂回献金に関する違法性】
・個人献金を装った実質的な企業献金(迂回献金)は違法
・企業役員が会社の金を個人名義で寄附する行為は脱法行為
【政治資金パーティーに関する違法性】
・政治資金パーティーのパーティー券を他人名義で購入することは違法
・企業がパーティー券を購入する場合も量的制限を超えれば違法となる
【記載に関する違法性】
・収支報告書に虚偽の記載をすることは政治資金規正法違反
・個人献金者の住所を企業の所在地と記載することも虚偽記入の恐れがある
【期限関連の違法性】
・政治団体の会計責任者が期限内に収支報告書を提出しないことは違法
・公職選挙法上の選挙期間中の企業献金に関する規制もある
個人献金と企業献金の違いについて
政治献金は大きく分けて「個人献金」と「企業献金(団体献金)」の2種類があります。
個人献金は、日本国籍を持つ個人が政治団体(政治家が指定する資金管理団体や政治家の後援会など)に対して行う寄附です。個人は一政治団体に対して年間150万円までの政治献金が可能です。
対して企業献金(団体献金)は、企業や労働組合などの団体が行う政治献金です。
企業献金は違法なの?
企業献金自体はすべてが違法というわけではありませんが、政治資金規正法によって厳しく規制されています。
【寄附の対象者による違法性】
・政治家個人への直接的な企業献金は禁止
・政治家の資金管理団体への企業献金は禁止
・政党・政党支部・政治資金団体以外への企業献金は違法
【企業の属性による違法性】
・国から補助金等を受けている会社による政治献金は禁止
・3事業年度以上にわたり継続欠損を生じている会社からの献金は禁止
・外国法人からの献金は禁止
(ただし、5年継続して上場している外資系日本法人は除く)
【寄附の量的制限による違法性】
・企業の資本金に応じた上限を超える献金は違法
資本金10億円未満:750万円まで
資本金50億円未満:1500万円まで
資本金100億円未満:3000万円まで
以降、段階的に上限額が上がり、最大1億円まで
【寄附の方法による違法性】
他人名義(トンネル献金)による政治献金は違法(3年以下の禁固または50万円以下の罰金)
政治資金収支報告書への虚偽記載は違法(5年以下の禁固または100万円以下の罰金)
【迂回献金に関する違法性】
・個人献金を装った実質的な企業献金(迂回献金)は違法
・企業役員が会社の金を個人名義で寄附する行為は脱法行為
【政治資金パーティーに関する違法性】
・政治資金パーティーのパーティー券を他人名義で購入することは違法
・企業がパーティー券を購入する場合も量的制限を超えれば違法となる
【記載に関する違法性】
・収支報告書に虚偽の記載をすることは政治資金規正法違反
・個人献金者の住所を企業の所在地と記載することも虚偽記入の恐れがある
【期限関連の違法性】
・政治団体の会計責任者が期限内に収支報告書を提出しないことは違法
・公職選挙法上の選挙期間中の企業献金に関する規制もある
政治資金規正法の目的は、政治活動の公明と公正を確保し、民主政治の健全な発達に寄与することです。
そのため政治資金の収支の公開と政治資金の授受の規制が設けられています。
今回問題となっているのは、個人献金の形を取りながら実質的には企業献金ではないかという点です。
特に政治家個人への企業献金は禁止されているため、個人献金を装った「迂回献金」の疑いが持たれています。
業献金を個人献金と偽装する「迂回献金」として問題視されています。
なぜ個人献金ずさん記載問題が起きたのか?
個人献金ずさん記載問題が起きた背景には、いくつかの要因が考えられます。
一覧にまとめてみましたのでご覧ください。
・実務的な問題
・迂回献金の疑い
・チェック体制の不備
・理解不足
・慣行化した問題
これらの可能性が挙げられますが
ではそれぞれについて詳しく解説していきます。
なぜ個人献金ずさん記載問題が起きたのか? ⓵実務的な問題
多くの政治家事務所は、寄付を受け付ける際に献金者自身に住所や氏名を記入してもらう方式を採っていますが、実際には事務所側で住所を把握・入力するケースも少なくありません。
石破首相の事務所は
「寄付の際に事務所で把握した住所を記載しているが、確認の上、適宜対応する」
と回答しており、他の閣僚の事務所も「献金者からの申告通りに記入した」などと釈明がでております。
しかし東京都心の商業ビルを住所欄に記入した例もあり、事務所側が確認を怠っていたケースも見られます。
このように収支報告書の記載内容をチェックする体制が不十分だという指摘があります。
中央省庁でさえこのようなありまさまですから
各都道府県に至っては
選挙管理委員会や総務省に提出される収支報告書について、記載内容の正確性を確認する厳格な仕組み自体が整っていません。
特に寄付者の住所については、住民基本台帳やその他の公的記録と照合するような手続きは行われておらず、政治団体の自己申告に基づいて処理されているのが現状です。
なぜ個人献金ずさん記載問題が起きたのか? ②迂回献金の疑い
より根本的な問題として、形式上は個人献金を装いながら実質的には企業献金を受け取るという「迂回献金」の可能性が指摘されています。
特に企業・団体献金の受け皿となる政党支部を持たない県知事などが、事実上の企業献金を受け取る「抜け道」として個人献金の仕組みを利用している疑いがあります。
政治資金規正法では、企業からの寄付は政党または政治資金団体への献金のみが認められており、政治家個人への直接献金は禁止されています。
これを回避するための方法として、企業の代表者個人からの献金という形式を取りながら、実質的には企業からの資金提供と変わらない状況が生じている可能性があります。

わかっていながらも手を染めたケースですね
なぜ個人献金ずさん記載問題が起きたのか? ③政治資金規正法の理解不足
政治資金規正法の趣旨や内容に関する理解が不足していることも要因の一つと考えられます。
政治資金の透明性確保という法の目的に対する認識が低く、収支報告書の記載を形式的な手続きと捉えている可能性があります。
政治資金に詳しい専門家からは
「政治資金規正法は透明性を高めるためのものであり、その趣旨に則った運用が求められる」
との指摘がなされています。
なぜ個人献金ずさん記載問題が起きたのか? ④慣行化した問題
今回の調査で与野党を問わず、また国会議員から地方自治体の首長まで広範囲に同様の問題が見つかったことから、これが政治の世界で慣行化していた可能性も考えられます。
問題の広がりは、特定の政治家や政党に限らない構造的な課題であることを示唆しており、政治資金の透明性確保のための制度設計自体を見直す必要性も指摘されています。
個人献金ずさん記載問題についてまとめ
ここまで政治家の間で発覚した個人献金ずさん記載問題について紹介してきましたが
政治資金収支報告書における個人献金のずさん記載問題は広範囲に及んでいます。
【石破茂首相と閣僚14人】
370件 計1472万2千円分
【野党6党首】
289件 計2113万5千円分
【県知事20人】
610件 計3629万1千円分
この問題の根本には以下のような課題があります。
・政治資金収支報告書の記載に関するチェック体制の甘さ
・個人献金を装った実質的な企業献金(迂回献金)の可能性
・政治資金規正法の理解不足やコンプライアンス意識の低さ
政治資金規正法は、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため
政治団体の届出、政治資金の収支の公開、政治資金の授受の規制などを定めています。
政治資金の透明性は民主主義の根幹に関わる問題であり、今回の一連の問題をきっかけに政治資金規正法の運用の見直しや、記載ミスを防ぐためのチェック体制の強化が求められるでしょう。
今後は各政治団体がこの問題を真摯に受け止め、適切な対応を取ることが、国民の政治不信を払拭するために不可欠です。
私たちも今回の問題を受けて政治に関心を持ちこのような問題に対して声を上げていくことが重要なのではないでしょうか。
ここまで読んでいただきましてありがとうございます。
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